やまざかり

山に関する情報を中心に発信しています。直近の目標は日本三百名山登頂。夢は大きくセブンサミット踏破!

【山行記録】2016年10月29日 雄山・大汝山 〜立山縦走→富山マラソンという挑戦〜

●プロローグ

若者よ、身体を鍛えておけ。

美しい心が、逞しい身体に、辛くも支えられる日がいつかは来る。

その日のために身体を鍛えておけ、若者よ。(「若者よ」より)

立山に 初めて立ちし 遠つ祖も 

涙拭はず 祈りましけむ (雄山山頂の石碑より)

●一つの挑戦

夜行バスは随分快適なものもあるんだな。あくびをしながら、うつらうつらしながら、一人感心していました。3列シートと書かれていたので、真ん中に通路があって、3列×2なのかと想像していたら、バスに入って目が丸くなりました。通路が2つある・・・「全部で」3列しかない・・・。なるほど、そうきたか。旅の始まりからいきなり面食らってしまいました。
 
こうやって夜行バスに乗ることにしたのも、直前に決めたばかりのことでした。折角富山にいくのであれば、やっぱり山に登りたい、そしてその山は、立山であるべきだろう、そんな風に思ったのでした。
 
立山連峰の主峰たる立山は、雄山(3,003m)と大汝山(3,015m)、および富士ノ折立(2,999m)の三つの峰の総称になります。立山は古くから山岳信仰の対象とされ、日本三大霊山の一つとして地元の人をはじめ、多くの人から敬意をもたれている山です。今回は雄山と大汝山の二つの3,000m峰を縦走する予定を立てました。
 
そもそも今回の一番の目的は富山マラソンにでて、完走し、自己ベストを更新することです。(こちらについては別のブログをご参照くださいませ)。
 
             -準備運動がてら立山に登り、その翌日にフルマラソンを完走する-
 
周りから無謀と言われた計画に挑戦することにワクワクしながら富山を目指しました。有給を取れていれば、こんな窮屈なスケジュールにならずに済んだのですが…自分の力不足を恨みます。
 

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●いざ、アルペンルート

バスは時間通り朝の5時30分富山駅に到着しました。駅前は閑散としていますが、同じような登山者がチラホラいました。あいにくの雨模様ですが、予想通りなので落ち込みません。
アルペンルートのコース全体図については文章の最後に参考資料として載せてありますので、ご参照くださいませ。 

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まずは富山地鉄に乗って、1時間ほどかけて立山駅を目指します。列車はがたんごとんと音を鳴らし、のんびり目的地へ向かいます。気づいた時には眠りに落ちており、気がついたら駅についていました。立山駅にて登山口がある室堂までの往復チケットを購入します。混雑すると30分ほど待つこともあるらしいので、前日までにオンライン予約をしておくことをお勧めいたします。
 
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次にケーブルカーに乗って、美女木へ向かいます。所要時間は10分ほどですが、一気に高度を500mほどあげます。平均傾斜は24度、最大のところだと29度もあるそうです。目で見ても明らかな急斜面です。乗客は一斉に写真を撮ります。写真で見ても急なことが伝わるでしょうか。このケーブルカーには大きな貨車がついていることが有名で、これは黒部ダムの建設の時に資材を運んだものらしいです。
 
そして、美女木から登山口である室堂まではバスに乗ります。約1時間ほどかかります。途中で称名滝がみれたりいくつか観光スポットがあるようなのですが、残念ながら天気が悪かったため見ることはできませんでした。そして、何より終始寝ていました。いつも通り気づいたら目的地についているパターンです。
 
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さて、いよいよ室堂に着きました。寒い、とにかく寒い。気温は0度とのことでした。UNIQLOヒートテックに、Patagoniaのナノエアフーディだけではさすがに寒くなってきたので、昔買ってタンスに眠っていたのColumbiaのハードシェルを上から着ます。彼にとっては今回が5年ぶりの復帰戦になります。「二軍で過ごした屈辱を、さあここで晴らすのだ!行ってこい!」とか心の中で叫びながら、黙々と着込みます。少し暖かくなってきました。山岳情報に目を通し、少し気が引き締まりました。
 
外に出てみると、ここまでの道中でたくさん人がいたのにもかかわらず、登山に向かう人はほとんどいませんでした。1組のカップルが私よりわずかに先に出発したのみです。
 
のんびりと準備をしていると、突然男性に声をかけられました。なんだろうと思って振り返ると、「山岳警備隊のものです。登山ですか?どこに向かうのですか?コースは?」とあれこれ聞かれました。「今日は天気も悪いですし、山頂は雪が降っているかもしれません。風も強いと思われます。無理をしないように十分に気をつけてください。靴も寒そうなので。」とアドバイスをいただき、一気に気が引き締まります。身軽にするために、トレランシューズで来てしまったこと少し後悔しました。
 

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●凍てつく風景

いよいよ登山開始です。といっても一ノ越までは散策路が整備されており、難なく登ることができます。標高は2,400mから2,700mまで登るので、はじめのうちは息があがります。途中で先ほどのカップルを追い越しました。かなりのんびりなペースだったけれど、上まではいかないんだろうか。
 

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道中、様々な植物が凍てついている姿を見ることができました。これだけ寒い山に登ったことはなかったので、初めて見る景色で、とても新鮮な感動を覚えました。

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そんな景色を楽しんでいるうちに、一ノ越につきました。ここまで40分ほど。ここからは山頂までを一気に直登します。山頂は雲に隠れてしまい確認することができません。延々と空まで続くかのような斜面にこの後の困難さを予想します。 

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●神々しき頂きへ

岩、岩、岩。とにかくひたすらガレ場が続きます。ただの岩ならいいのですが、ところどころ凍結していて、うっかりしていると、とても滑るのでさくさくとは進めません。手がつるっと、足がつるっと、前後につるっと、左右につるっと。そんなことの繰り返しでした。初めての経験でした。こんな感じで50分ほど黙々と登っているうちに人工物が見えてきました。気持ちが高まり、足を速めます。

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そして10時45分、雄山山頂に到着しました。2011年に登った富士山以来の3,000m峰への登頂です。いろんなものが凍ってます。

 

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山頂には誰もいませんでした。山頂を一人じめできる贅沢に浸ります。景色は残念ながら雲だらけ。しかし時より、一瞬だけ雲が晴れることがありました。その時雲の合間から見える空はとにかく青く、清らかでした。山の下からでは想像のできない天気が山頂にはあるんですね。
 

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雄山神社に参拝し、安全に戻れるように心の中で唱え、次の目的地である大汝山を目指します。大汝へは少し下って、登り返しになります。これまでの道と同じく岩だらけで時より凍結しているところもありますが、危険を感じるようなところはありません。そして、雄山を経って30分ほどで、大汝山山頂に至りました。
 

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特に大きな目印などはないですが、ひっそりと杭が立ってます。凍結していたため、なんて書いてあるのかは全くわかりませんでした。風が強かったので岩陰に隠れて休息を取ります。10分ほど休憩し、下山を開始します。この辺りから雲が晴れるようになってきました。

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●下山

復路にて地面の足跡を確認してみると、私のもののみが残っているようでした。たぶん、今日の山頂一番乗りは私だったんだろうと思うと、特別嬉しくなりました。山登りは競い合うものではないとは思いますが、やはり一番はいいものです。
 
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雄山に戻った時に、別の登山グループに遭遇しました。山頂を独り占めできる時間帯に到着しておいてよかったなと思いました。天気は少しずつ回復に向かっているようでした。山頂では虹もかかっていました。ときたま、遠くの山の山頂が頭を見せます。その光景もまた幻想的でした。とにかく空が青かった。そして澄んでいました。
 

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帰り道は登りと比べるととても楽でした。晴れてきた事、高度に慣れてきた事もあるかと思いますが、あっという間に一の越まで下れました。途中数組の登山者とすれ違いましたが、それでもピーク時と比べたら、とても少ない人数なんでしょうね。気さくなおじさんが、一の越の小屋の近くで雷鳥が群生しているという事を教えてくれましたが、残念ながら自分がついた頃にはすでにいなくなっていました。
 
このままでの勢いをそのままに、室堂まで一気に下ります。トレラン気分で進んでいくと、25分ほどで室堂に戻ってこれました。13時5分に無事下山することができました。
 
室堂は山頂の静けさからは一変して、観光客で賑わっていました。ツアー客、特に中国・韓国からの方がとても多く見受けられました。そういえば、アルペンルートがとても人気なんで話をどこかで聞いた事があります。帰りのバスの時間まで少し時間があったため、立山蕎麦を食べる事にしました。
 

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身体が一気に暖まります。立山と刻印されたかまぼこがかわいい。蕎麦を食べ終わった後に温泉卵を飲みます。タンパク質の補給です。
 

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飲むヨーグルトと牛乳も飲みます。タンパク質の補給です。さて、ここからは行きと往路と同じルートで帰っていきます。急いで帰って、フルマラソンのエントリーをしなければ・・・。次はゆっくりと観光しよう。あたたかい時期に来よう。
 
さらば、立山!また会う日まで!
 

●下山後の食事

ラーメンマニアの側面を持つ私は、旅先で出会ったラーメン屋は必ず入るようにしている。濃厚だけれども、とても飲みやすいスープが魅力的な一品。もし機会があれば是非。

●今回の宿

銭湯が併設された宿泊施設。料理場もあり、館内は広々としている。素泊まりで4,000円で、しかも何回でも銭湯に入っていいという良心的な価格設定。部屋は和室でこたつも付いている。銭湯も10種類程度の浴槽があり、十分満足出来る。今回本当は二人で泊まる予定だったが、急遽一人がキャンセルになってしまった。そのことを伝えると、「泊まらない方の分は頂戴するわけにはいきません」と4,000円返してくださった。その優しさに心がほっこりした。魚津駅から20分ほど歩かなければならないのが少し気になるが、かなりオススメの宿です。

●勝手に採点

総合    ★★★☆☆
・難易度★★☆☆☆
室堂から雄山、大汝山を目指すルートは危険を感じるところはない。ただし、時期によっては凍結に注意。
・コスト★★☆☆☆
室堂までの交通費はなかなかに高い。詳しくは下記「費用」欄を参照。
・楽しさ★★☆☆☆
登山道は単調であまり面白みはないかもしれない。季節や天気の影響もあるだろう。他のルートは変化に富んでいて楽しいという話もあるので、次回は別のルートを試してみる。
・景色★★★☆☆
今回は天気がイマイチだったので、あまり良い景色には出会えなかった。しかし、凍結した植物たちはとても綺麗だったし、時より垣間見えた景色はとても美しかった。季節と天気次第では相当景色を楽しめるのだろうとと思う。

●総括

今思えばこの時期の立山に軽装備で登れたのは運がよかったのかもしれない。昨年の同じ頃を写真を見ると立山はすっかり雪化粧をしている。今回は凍結も雪も大したことがなかったから無事に帰ってこれたが、やはり事前の情報収集、準備、計画が大切だと再認識した。「10月からは冬山です」という注意書きが印象に残っている。夏山と冬山では(それが仮に同じ山だとしても)、見せる姿は全然違うのだという勉強になった。

●コースタイム

●費用

・高速バス(東京⇨富山):7,700円
※新幹線だと約12,000円
電鉄富山駅立山:1,200円(片道)×2=2,400円
立山駅〜室堂:4,210円(往復)

●参考情報