【山行記録】2017年5月14日 木曽駒ケ岳 -雪残る千畳敷。急斜面の先に広がる素晴らしき世界-
第0章 プロローグ-唐突な誘い-
「今週末、キソコマ、いかね。」
大学時代からの友人から唐突に連絡が入った。彼とは山の話こそすれ、これまで一緒に山に登ったことはなかった。
珍しいこともあるもんだ。そんなふうに思いながらも、こと山の話に関しては誘われたら絶対に断らない主義の私は即答した。
「よっしゃ、行こう!」
雪山に登ろう登ろうと思いつつも、一歩踏み出すことができずにいた中での貴重なお誘い。雪山に登るのは来年になるかなと思っていた中で一気にデビューが近づいてしまった。とりあえず、アイゼンとピッケル買わなきゃ!・・・ドタバタと準備をしているうちにあっという間に当日を迎えたのであった。
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●山のあらまし
中央アルプスの最高峰である木曽駒ケ岳は標高2,956mを誇る。日本百名山の一座である。木曽駒ケ岳の名所である千畳敷カールへはロープウェイが整備されており手軽に訪れることができる。雪の季節でなければ山頂まで登ることはさほど困難ではないため、気軽に登ることができる3,000m級峰としての人気もある。雪山の季節は難易度が上がることは間違いないが、雪山入門の一座として登る人も多いようだ。
●コース概要
菅の台バスセンターからしらび平駅はバス、しらび平駅から千畳敷まではロープウェイを乗り継いでアクセス。千畳敷から駒ケ岳頂上はピストン。
●登山環境
・快晴、外気温は山頂は五度くらい。
・雪はまだまだ残っている。千畳敷の積雪は3.5mくらい。千畳敷の雪はドロドロとしていなかったが登りきった先は一部ぬかるんでいる場所もあった。10本爪以上のアイゼンは持って行くべき。ピッケルはもちろん、別にストックもあった方がよい。
・人出は比較はできないが、朝イチのバスには40人ほど乗っていたと思う。登山客とバックカントリー組が半々くらい。年齢層は大体だが40代以降が多かった印象。
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第1章 深夜行
普段は私が運転をするのだが、今回誘ってくれたTくんは絶対に人に運転をさせない。そして、助手席に座った人物を絶対に寝かせてはくれない。時間は深夜1時。山に登る前から私は困難に見舞われた。深夜の高速は快適だ。渋滞とは無縁でスイスイスイと進む。思えば二人での旅行と初めてだった。会話が自然と弾む。途中一回だけ休憩を挟み、朝方4時に菅の台バスセンター駐車場に到着。この時点ですでに10数台の車が止まっていた。木曽駒ケ岳の集客力恐るべし。
あたりはシンとした寒さに包まれている。近くに川があるのだろう。轟々とした水のざわめきは朝を迎えようとする明るみと相まって神秘的な情景を演出していた。始発のバスは7時過ぎだ。少し仮眠をとろう。助手席を少しだけ後ろに倒し、期待に胸を膨らませ、眠りを深めていった。
第2章 千畳敷
目が覚めた時すでに辺りはざわめきに満ちていた。山に向かおうとする者たちは軒並み慌ただしい朝を迎えているようだ。私はパサパサになったコンタクトに再び命を吹き込みつつ、ゆっくりと身支度と始めた。車の外はさわやかな空気でいっぱいだ。天気は快晴。前日の雨模様が嘘のようにいい天気である。
準備を終えてまずはバスの列に並び、荷物を置き、バスとロープウェイの往復チケットを購入する。 計3,900円。標高2,612mまで連れて行ってくれるのだ、我慢しよう。朝一番のバスは朝から大行列だ。経験豊富そうな先達たちの装備を見ると、自らの装備が貧弱に見えてきて不安になってしまう。スキーやスノーボードを担いでいる人が多い。これがバックカントリーってやつか。
臨時バスが出ていて、7:15に乗り込むことができた。まずはロープウェイ乗り場のしらび台まで30分。気付いたら寝ていて、気付いたら到着していた。ここからはロープウェイに乗り換えて一気に標高2,612mまで登っていく。所要時間は約8分。こんなところにこんなものをよく作ったもんだ。先人に感謝。
8時過ぎついに千畳敷に到着!外は白銀の世界が広がっている。そして寒い。上と下ではここまで様相が異なるのか。眼下には雲海が広がっている。朝の時間に山の上にいる人のみが味わうことができる贅沢な景色にしばし見とれる。
↖︎雲海晴れてよかった。
↖︎「ハハハ、人が蟻のようだ!」
周りの人々は着々と準備を進めている。私も恐る恐るアイゼン装着の儀を始めた。買わなくてもいいかなと思っていたが、千畳敷を目の当たりにして無理してでも買っておいてかったと思うのであった。アイゼンの装着の仕方はこれでいいのだろうか、きっと大丈夫だろう。そう自分に言い聞かせて登頂開始した。
↖︎完全防備。日焼け対策。
第3章 急斜面
我々の先にはすでに30人くらいが昇り始めていた。蟻のように小さく見える人びとが一列に並んで少しずつ進んでいる。その歩みがとてもとてもゆっくりであることが我々を不安にさせる。
「これ、めっちゃ急なんじゃね」
Tくんはハイテンションに不安が入り混じる言い方でそう呟いた。実際昇り始めていくと徐々に斜度が急になっていく。前を行く人の歩みが止まりがちになる。もちろん我々も苦戦した。ふと立ち止まって後ろを振り返ると高度感にフラフラする。そう、我々は二人とも高度恐怖症なのだ。アイゼンとピッケルがなければ登ることはできなかっただろう。時より現れる踏み抜きに注意しつつ、先行者の作ってくれた足場を頼りに少しずつ進んでいく。
↖︎飛行機雲が美しい。
↖︎最大斜度40度くらいの場所か。
一番の急斜面について時、恐る恐る後ろを振り返ってみた。怖いもの見たさという、人間のこのわけのわからない習性はなんなのだろう。足がガクガクする。これ、今後ろにふらっと倒れたらどうなるんだろう。そんなふうに考えていると吸い込まれていくように身体が倒れそうになる。平衡感覚がなくなっていくかのようなこの感覚・・・。だめだだめだ。上と前だけを見て進んでいこう。それだけを考えよう。そんなふうに言い聞かせながら一歩一歩進んでいた。そして登頂開始から約一時間で乗越浄土(標高2,858m)に到着。ここまでくればとりあえず一安心だ・・・。二人でそっと胸をなでおろしたのであった。
↖︎宝剣岳。
第4章 山頂へ
ここからは中岳を経由して、駒ケ岳を目指していく。多少のアップダウンはあるものの、これまでの斜面に比べたら大したことはない。バックカントリーに興じている人たちを眺めながら一時間ほど歩き駒ケ岳についた。
↖︎目指せ山頂
↖︎かっこいい。憧れる。
山頂には思った以上に人がいて写真撮影に興じていた。岩陰に場所を取り早速食事をとることにした。普段であればバーナーもコッヘルも持ってくるのだが、今回は初めての雪山ということで極力荷物を減らしたく、インスタントラーメンで我慢することにした。家から山専ボトルに入れて運んできたお湯を味噌ラーメンに注ぐ。湯気が立ち上がる。3分なんて待てない!それにしても山専ボトルはすごい。すでに一時間程度経過しているのに80度くらいの温度を保てている。山に行く上では必需品と言っても過言ではなかろう。疲弊した体に味噌ラーメンは染み渡っていった。醤油とかとんこつとか塩にしなくてよかった・・・。やっぱり山には味噌ラーメンや・・・とわけのわからないことを考えつつ、あっという間に完食。その他には諏訪湖SAで購入したどら焼きを食べ、おにぎりもひとつ食べた。
↖︎大島味噌ラーメン。
食事も終わり、周囲の景色を楽しむ。八ヶ岳連峰、南アルプス、北アルプスを遠景に捉えることができる。昨年は北アルプスばかり登ったから今年は南アルプスに登ろう。そんな風に山々を眺めていた。ひときわ印象的だったのは御嶽山だ。2014年に噴火して以来入山規制が出ているとのことだったが、途中までは登ることができたはず。近いうちに登ってみたい。それにしても一つ一つの山容を
↖︎御嶽山。
見ただけでは名前がわからないものばかりだ。まだまだ勉強が足りない。身体が冷えてきたので記念撮影だけして下ることにした。
↖︎三の沢岳との情報
第5章 下山
下りは圧倒的に楽だった。急斜面はしっかり一歩一歩踏みしめたが、急斜面以外は他のブログで紹介されていた通り尻で滑ってみることにした。最初はスピードの制御も方向の制御も取ることができなかったが、慣れてきてある程度操れるようになってきた。思った以上にスピードが出るので、一気に降ることができた。そりを持っていくといいというのはこういった楽しみ方をするためだろうが、そりなんか使ったらトンデモナイスピードが出て怖いだろうなとも思った。千畳敷駅には12:30頃に戻ってこれた。登り始めてから約4時間なので、ほぼコースタイム通りで戻ってくることができた。アイゼンを外し、ケースにしまい、千畳敷を振り返る。さっきまであの上にいたのかと思うとちょっと不思議な気持ちになった。雪山っていいな。バックカントリーってかっこいいな。まだまだ知らないことがたくさんある、試したことのない楽しいこと、おもしろいことがたくさんある。そんな思いでいっぱいになった。挑戦したいことがまた一つ増えた。そんな山行であった。
↖︎次回はバックカントリーを楽しむ!
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●タイムスケジュール
1:30 東京発
4:00 菅の台バスセンター
4:00~7:00 仮眠
7:15 臨時バス乗車
7:45 ロープウェイ乗り口着
8:00 ロープウェイ発
8:15 ロープウェイ着
8:30 千畳敷カール登頂開始
9:30 乗越浄土到着(m)
10:00 中岳到着
10:30 駒ケ岳到着
11:15 下山開始
12:30 下山
●グルメ
ソースカツ丼が有名のようだ。今回は食べられず。
●温泉
信州駒ヶ根高原 早太郎温泉 こまくさの湯…大人610円。菅の台バスセンターからは徒歩3分。広々としている。露天風呂は眺望も良い。温泉で買った牛乳を一口だけ飲んであとは持参したプロテインを飲むという行為にはまった。
●反省と今後
冬山は夏山とは全く違うということを実感した山行だった。それは夏山とは違う心構えや装備、行動の仕方という意味でもあれば、違った楽しみ方や美しさがあるという意味でもある。バックカントリーをしている人たちがとても楽しそうだったし羨ましかった。バックカントリーを少しずつ始めよう。
アイゼン、ピッケルは初利用だあったが、改めて雪山講習にでて先達にしっかり学ぼうと思う。雪山用の靴、雪山用の服装は少しずつ揃えて行こう。まずは今回買ったアイゼン、ピッケルの手入れをしっかり行い大切にして行こう。あってよかったギアとしては、バラクラバ、サングラス。日差しが半端ない。雪山を楽しむアイテムとしてそりを買う。今回の山行を通じて、多少無理してでもまずは行ってみるということは大切だなと改めて実感。ただし、雪山には大いなる危険が伴うことは認識しなければならない。
●費用
中央道往路(調布~駒ヶ根)…3740円(ETC深夜割引適用)
中央道復路(調布~駒ヶ根)…3740円(ETC休日割引適用)
菅の台駐車場…600円
バス&ロープウェイ往復…3900円
●参考ウェブサイト
●おすすめギア紹介