やまざかり

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【番外編】2017年7月2日 第10回嬬恋高原キャベツマラソン-キャベツの王国嬬恋高原。日本一過酷なロードレースに挑戦-

●プロローグ
手頃なハーフマラソンはないものか。秋のフルマラソンへ向けての調整も兼ねてハーフマラソンを探していた。同じコースをただ周遊するだけではツマラナイので、何かしら変化に富んだレースを探していた。
 
そんな時に見つけた一際目立つ大会が嬬恋高原キャベツマラソンだった。私はスイーツランのような奇を衒った大会は苦手だ。最初はキャベツマラソンにもいいイメージはなかった。そもそもキャベツは特別好きではない。居酒屋で出てくるお通しのキャベツは全く手をつけないし、トンカツについてくるキャベツも「このやろうかさ増ししやがって」くらいにしか考えていない。しかし口コミ評価を見る限りかなり高く評判のレースのようだ。これはきっと何かあるはずだ…。少し調べてみると、なるほど、キャベツマラソンは今年で10回目の開催となるそれなりに歴史のある大会らしい。そして何よりも、アップダウンを繰り返すコースに定評があり、「日本一過酷なハーフマラソン」を自称しているではないか。山を登るものとして、これは挑戦するしかない。こうして謎に満ちた大会へエントリーしたのであった。
 
嬬恋村…小学校の時、地理の授業で何度その名前を聞いたことか。嬬恋村はキャベツの名産地。呪文のように唱えて暗記したものだった。けどそれだけ印象に残っているにもかかわらず今まで一度も足を運んだことがなかったし調べたことがなかった。嬬恋観光も兼ねて一走りするか。そんな甘い考えで嬬恋へ向かった。
 
●大会情報
【出場人数】約3,500人
【エントリー料金】高校生以上4,000円
【コースマップ】

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●前日
本番当日に車で向かうのは渋滞のリスクもあるし、体力的にも大変だから、前日から現地入りしておこうと考えた。宿に泊まるのは高くなってしまうから、キャンプ場にテントで泊まろうと思いつき探してみると、無印良品カンパーニャ嬬恋キャンプ場が空いていた。以前から気になっていたキャンプ場であり、一度試してみたいと思っていたのでちょうどよかった。オートキャンプエリアであれば大人1人2,160円と、周辺のキャンプサイトに比べると少し高めの価格設定であるが、センターハウスでは食材(もちろん無印の!)を調達することができるし、サニタリー棟も綺麗なので納得の料金です。 
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家族連れや大学生のグループが多い中で翌日ハーフマラソンに向けてプロテインを取ったり、ストレッチをしている人はまったく見かけなかった・・・。今度は普通にキャンプをしにこよう。
 
●いよいよ本番
テントでの睡眠は決して快適とは言えないが、程よく寝ることもでき、朝を迎えた。キャンプ場から大会会場までは約2キロなので、歩いて20分ほどだ。天気は曇っていて今にも雨が降り始めそうだった。少し肌寒いくらいの気温だ。会場までウォーミングアップがてら小走りで向かった。半分くらい進んだ辺りだろうか、「ヤツ」とご対面した。延々と続く急坂だ。ランナーからは地獄坂と恐れられている。急坂とは聞いていたけれど、内心舐めていた。
こちとら、トライアスロンも二回完走していて、フルマラソンもハーフマラソンも何度も経験を積んでいるし、最近は登山で身体を鍛えているんだ。ちょっとやそっとの坂じゃ負けへんで〜
見事なまでの愚か者である。いざ登り始めると、めちゃくちゃきつい。すぐに足が重くなり、スピードが全くでない。こ、これはやばい・・・。本番前からすでに身体は悟ってしまった。これは無理・・・。ようやく登りきったので、とりあえず坂のことは忘れることにした。あいつは最後まで出てこない。とりあえず目の前のことに集中しよう。
 
●キャベツ一色
メイン会場は多くの選手で満ち溢れていた。目立っていたのはキャベツ柄のスポーツウェアを着た人たちだった。各大会ごとにデザインを変えて、参加賞としてではなく記念品として販売しているようだ。なかなかオシャレである。キャベツがあまり好きでないので、購買意欲は残念ながら刺激されなかったが・・・。
 
開会イベントが始まった頃には雨がシトシトと降り始めた。身体がどんどん冷えるなと思い、タープの下に避難した。開会宣言が終わるとスタートに向けてあたりがそわそわし始めた。出店を見て回ったり、トイレに行ったり、荷物を預けたり、準備運動をしたり、そんなことをしているうちに天気がみるみるうちに回復していった。そして一気に日差しが出てきた。先ほどとは打って変わって暑くなってきた。まさかの展開に周りの選手たちも驚いていた。これが、キャベツの魔法なのか。そんなことを思いながらスタート地点に向かった。
 
●スタート!
スタートは必ず最後尾からすることにしている。そうすれば基本的には「抜かれる」ということはないわけで、抜くことだけを考えていればいいからモチーベションも維持しやすい。そして、9時ちょうどにレースはスタートした。
 
はじめは下り坂が続く。そしてたまに登りがやってくる。普通ロードレースというものはフラットな道が続き、時より坂があるものなだが、このレースは違っていた。上り坂か下り坂しかやってこないのだ。しかし、これまで下りを楽だと感じたことはなかったが、下りは本当にありがたかった。登りきった先では登る必要がないというトートロジーのような言い回しになってしまうが、まさにそんな気持ちであった。
 
それにしても景色がすばらしかった。延々と続くキャベツ畑。きちんと整列して埋められているキャベツの群れに、農家の方々の努力を感じた。沿道で応援してくださる方々の声がありがたい。そして給水所に並ぶキャベツ・・。キャベツよ、お前はここにも現れるのか。さすがに息が上がっている中でキャベツを食べる気にはなりませんでした。

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嬬恋村は愛妻家の村と言われている。歴史的ないわれもあるようですが、まあ親父ギャグだとしてもシンプルな町おこしの方法で好感が持てる。そんな嬬恋村には愛妻の丘というスポットがある。ハーフマラソンの最中であるにもかかわらず階段を駆け上り、妻の名を叫ぶ男たち・・・おっさんよ、かっこいいぜ。
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それにしても日差しが暑い、坂がきつい、そして最後にはヤツが待っている・・・そう思うと気が滅入りそうだった。
 
●ラスボス登場
そしていよいよやってきたラスト2km。この状態でこの坂を登るとかトンデモナイ。少し走ってみたけど無理でした。絶対に歩かないんだという信念は簡単に打ち砕かれ、早歩きで登ることに。嗚呼、情けない。
 
あと少しだ、頑張れ、走れ!!沿道からそんな声が聞こえてきた。そうだ、最後くらいは走ろう。今にも倒れそうな身体を奮い立たせ、ラスト300mを一生懸命走った。ゴールテープの前で1名を追い越し、ゴール・・・。ふらふらだった。結果はなんと2時間オーバー。自己最悪の結果だった。まああのコースじゃ仕方ないと自分を慰める。
 
お腹がすいてたまらない。導かれるようにしてキャベツを配るおばちゃん達の元へ。絶対普段なら食わないんだけどね・・・素キャベツうまいじゃないか。そう私はすっかりキャベツの魔法にかかっていたのだ。参加賞でキャベツ一玉をいただき、充実した気持ちで会場を後にした。
 
帰り道、必死に坂を登ってくる選手たちが続々とやってきた。思わず声をかけ続けた。
 
「ナイスファイト〜!」「ナイスラン!」「あと少しです!」応援とは自己満足的な行為かもしれないけれど、きっと少しでも救われたり勇気をもらったりする人がいるはず。自分は少なくとも応援されることは嬉しい。何人かの人が笑顔でありがとうと言ってくれた。私も笑顔になった。
 
応援の連鎖、支えあいの連鎖、笑顔の連鎖。最後の最後までキャベツの魔法は私を魅了し続けた。広大なキャベツ畑を前に、ふと思った。
 
きっと来年もまたここに来るだろう。

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●温泉

嬬恋高原つつじの湯

岩盤浴の利用もセットで600円という料金は非常にお得だ。露天風呂も広々としていて気持ちが良かった。私にとってはちょうど良かったが、人によっては少しぬるく感じるかも?
●食事
→あたりにたくさんノボリが出ているので誘われるようにして入ってみた。正直特別蕎麦が美味しい訳ではなかった。ごく普通。ただ、民家を改築した店内は一見の価値あり。
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